死ぬまでにしたいこと
「死ぬまでにしたい10のこと」は珍しくロードショーで観た。
泣きたかったからだ。めでたく泣いた。よかったなーと思った。
またそのへんのいきさつはどこぞの原稿で書くつもりでいるけれども、今回は、原作を読んだ。原作は結構批判されているみたいだけど、私は気に入った。淡々と死んでいく感じで、なかなか良かったからだ。
でもってもう1冊、この映画にからめて出版されたのは、酒井順子さんや室井佑月さんら女流作家さん達が自らの「死ぬまでにしたい10のリスト」を書いたエッセイ集である。この本の存在を知った時「ああ、私も書かせていただきたかったなあ」とうらやましく思った。この映画には結構こだわっているつもりだからだ。がんばっていつの日か、お声がかかるくらいに有名になりたいものである。
だけども私はあと2ヶ月の命と告げられたらまず間違いなく小説を書き続けると思う。そして「くそぅ時間切れかよ、まだまだ書きたりないぜ」って思いながら息を引き取っちゃうんだろうと思う。リストの残りの9個は、正直、おまけみたいなものだ。2人の子どもと離れちゃうことは淋しいし心配だけど、それよりも「おいおい急いで書かなくちゃ」という気持ちが上回ってしまうことは確実だ。子ども達はこれからも生きられる。だけど私はこの設定の場合あと2ヶ月しか生きられないのだもの。
で、私は今回10人の女流作家さんたちがどのくらいリストの中に「作品を書く」ということを入れているかを知りたくて本を買った。そして驚いた。書くと明記していたのは谷村志穂さん、角田 光代さん、八塩 圭子さんの3人だけだったのだ。他の方々はあんまり書くということにこだわりはなかった。
どうやら私は作家としては不器用なたちらしい。毎日書いてないと気が済まないし、小説を書いてない自分のことなんて、考えられない。他の麗しい女流作家さんたちはそうでもないらしい。頭から小説のことが離れる「死ぬまでの2ヶ月間」を送ることができるらしい。なんだかうらやましい気がした。きっと激しい恋をしたりキレイに着飾ったりもなさるだろう。対して私はきっと髪を振り乱して小説を書き綴るだけなのだ。なんとも恥ずかしいというかカッコ悪い女である。
9.11テロが起きて、どうしようどうしようと私がアワアワしていた時、尊敬する作家の睦月影郎さんが、私達が参加しているプライベートBBSにこう書き込まれたのを今でも忘れられない。
「それでも私たちは書くしかできない」
すごく、その時、えらいお坊さんに禅問答された時のような悟りを開かせていただいた。
そう、私もそう。結局は書くしかできない。何があっても、もうすぐ命がつきようとしていても……。睦月さんに励まされながら、今日も私は書いている。書くしかできないから。
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死ぬまでにしたい10のこと 斎藤 薫, しまお まほ, 酒井 順子, 角田 光代, 八塩 圭子, 室井 佑月, 倉田 真由美, 谷村 志穂, 横森 理香, MAYA MAXX |
![]() | 「原作」死ぬまでにしたい10のこと—初めて人生を愛することを知った女性の感動の物語 ナンシー キンケイド, Nanci Kincaid, 和田 まゆ子 |
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